死亡事故の場合、個人事業主の逸失利益は前年の年収を元に算出される
個人事業主の逸失利益の計算方法
農家、医師や税理士、著述業などの個人事業主が交通事故の被害に遭い死亡することもあります。このような場合、死亡した個人事業主の遺族は、個人事業主が死亡しなかった場合に得られるはずの収入を、逸失利益として、賠償請求することができます。
このような個人事業主の逸失利益を算出する際の計算式は、基礎収入×70%×就労可能年数に応じたライプニッツ係数またはホフマン係数です。基礎収入は、原則として、前年度の確定申告の際の申告所得額をそのまま用います。
なお、確定申告の際の申告所得額よりも、現実の所得額が多い場合には、現実の所得額を証明する資料を提示できれば、現実の所得額を基礎収入とすることができます。また、申告所得額があまりにも少ない場合や、実収入を算定する資料がない場合には、賃金センサスの男女別全年齢平均賃金を用いて、基礎収入を定めます。
なお、家族で農林水産業や飲食店を営んでいた場合には、その所得に対する本人の寄与分を考慮して、基礎収入を定めます。たとえば、夫婦2人で飲食店を経営していた場合の寄与分は、50%~60%ですから、夫婦の片方がなくなった場合の基礎収入は、飲食店の所得額×50%~60%となります。
また、兼業農家の方などで、個人事業主としての収入の他に、給与収入などがある場合には、給与収入も基礎収入の算定の際には考慮します。前年の事業収入と給与収入を合計した金額が、基礎収入となります。
個人事業主の逸失利益の具体的な計算例
最後に、個人事業主の逸失利益の計算式を示します。50歳の個人事業主(年収1,000万円)の方が交通事故の被害者となり死亡した場合の逸失利益は、1,000万円×70%×(67歳-50歳=)17年のライプニッツ係数またはホフマン係数です。なお、70%を乗じるのは、収入の30%が生活費として費消されると想定されるためです。
ライプニッツ係数による計算の場合には、1,000万円×70%×11.2741=約7,892万円です。一方の、ホフマン係数による計算の場合には、1,000万円×70%×12.0769=約8,454万円です。ホフマン係数で計算したほうが、より高い金額となります。