示談書を公正証書にしておくと強制力を持たせることができる


物損事故の場合には支払いリスクが伴うことが多い

人身事故で加害者が任意保険に加入している場合には、被害者が賠償金を支払ってもらえないというリスクはそう高くはありません。示談交渉で加害者が賠償金を支払っても、その領収証をもって保険会社に請求すれば、被害者に支払った金銭を取り戻すことができるからです。

しかし、物損事故で、加害者が任意保険の対物賠償保険に入っていない場合には、加害者に対して、保険会社からの保険金の支払いがありませんから、加害者が示談交渉で決まった支払額を支払わない可能性が高くなります。

そのような場合には、示談交渉が成立した場合に作成する示談書を公正証書で作成しておくとよいでしょう。示談書が私製証書だと、強制執行力がありません。強制執行力とは、債務者が債務を履行しない場合には、裁判所が債務者の財産を強制競売し、その配当代金から債権者への弁済を行うというものです。

私製証書の示談書の問題点

私製証書の示談書にも強制執行力を行うことができます。私製の示談書もとに加害者に賠償金支払請求訴訟を起こして勝訴判決を得れば、その判決をもとに加害者の財産に強制競売をかけることができます。しかし、裁判を起こさなくてはならないため、手続きが煩雑です。

ですから、物損事故で加害者が対物賠償保険に加入していない場合など、加害者が賠償金を支払わないリスクが高い場合には、示談書は公正証書で作成すれば安心です。なお、この公正証書には「支払を怠った場合には、直ちに強制執行をされても異議ありません」などという「強制執行認諾文言」を付けてもらいます。

この「強制執行認諾文言」付の公正証書の場合、加害者が賠償金の支払いをしなければ、裁判手続きを経ることなく、直ちに、裁判所による強制競売の手続きを行うことができます。ですから、万が一、加害者が支払いを拒む場合でも安心です。

支払いリスク対策には公正証書による示談書がよい

保険会社の担当者相手の示談交渉の場合は、賠償金が支払われないリスクは非常に少ないので、示談書は私製文書で作成しても問題ありません。実際には、保険会社が用意した示談書をそのまま使うことが多くなっています。

ただし、当事者同士で示談交渉を行う場合には、支払いリスクのことを考慮に入れておかなくてはなりません。強制力のない示談書は紙切れと大して変わりありません。賠償金額が少額だと、割に合いませんからなかなか裁判は起こせません。

そこを加害者がついてきて、私製文書の示談書で交渉をまとめた場合には、示談内容を無視する可能性もあります。示談交渉の際に、示談書を公正証書で作成する旨も合意しておけば、そのような事態を未然に防げるので安心です。

公正証書の作成方法

最後に、公正証書の作成方法です。まず、当事者が実印と印鑑証明書をもって公証役場へ行きます。公証役場へ行ったら、公証人に示談の内容を話し、公正証書を作成してもらいます。なお、この際に、公正証書に「強制執行認諾文言」を付けてもらうことを忘れないようにします。

最後に、手数料を払います。手数料は、示談書に記載されている賠償金の総額が100万円までなら5,000円、1,000万円までなら17,000円、5,000万円までなら29,000円です。なお、公証役場には管轄がありませんから、日本全国どの公証役場でも作成可能です。

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